【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


シルディーヌの頬をゆっくりと滑らせていたアルフレッドの指は、柔らかな唇で止まった。

艶を含んだ瞳がシルディーヌを見つめている。

こんなアルフレッドの表情は初めて見る、大人の男の顔だ。


「俺が、お前を幸せにする。この先ずっと、一生」

「……いいの? 私は、貧相だし、美人じゃないわ。すぐに飽きるかも……」


突然、ガランと音を立てて剣が地面に落ち、シルディーヌの唇はアルフレッドに塞がれていた。

背中と後頭部をしっかり支えられ、気遣わし気に入り込んできた舌が口中を愛し気に這う。

しっとり濡れた舌がシルディーヌの意識を奪うように何度も絡められ、唇をねめつける。

次第に体の芯が熱くなり、甘い吐息だけが漏れる。

初めての口づけは蕩けるように甘く、シルディーヌは立っていられなくなり、アルフレッドの服をぎゅっと掴んだ。

恥ずかしさも、ここが外であることも忘れ、アルフレッドが与えてくる情熱を懸命に受け止める。

長い長い口づけ。

何度も角度を変えてむさぼるようにされてシルディーヌの意識が飛びそうになったとき、アルフレッドがようやく離れた。

濡れた妖艶な唇と熱い眼差しを、ぼんやりと見つめる。


「お前に飽きるはずがないだろう。俺は、ガキの頃からずっとお前しか見ていないんだぞ」

「……でも、すごく、イジワルだったわ」

「あれは、好きの裏返しだ。どんなにイジワルしても、お前はいつでも元気でかわいいんだ。そんなお前を見るのが好きだ。それは、今も変わらない」


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