【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
シルディーヌの髪を指先でそっと梳きながら、熱く見つめてくる。
ときどき耳をくすぐるように触れられて、アルフレッドの優しい指使いに酔いそうになる。
けれど、確かめたいことがある。
イジワルしても元気でかわいいところを見るのが好きと言うのは……。
「そ……それって、今も同じなの?」
「ああ、ずっと変わらないぞ。かわいいお前が好きだ。それに、俺は子爵家のお前に釣り合うように、がんばって今の地位を手に入れたんだぞ。今更ほかの男に渡せない。奪われたら、絶対に取り戻す。それが、フューリ殿下だろうと同じだ」
王太子殿下の名前を口にしたとたんアルフレッドの瞳が鋭くなり、シルディーヌの体をぐっと抱きしめた。
「ダンスをしながら、フューリ殿下となにを話していた?」
「え、見ていたの?」
「ああ、随分楽しそうだったな。無論、殿下が」
「え、えっと、あの時は……」
なんと答えればいいのか。王太子殿下のお相手事情の話は口止めされているのだ。
シルディーヌが口ごもっていると、アルフレッドの瞳がどんどん悪い意味で据わっていく。
「フューリ殿下に、口説かれたのか?」
「違うわ」
「ほう……本当に、そうか?」
アルフレッドは優しく頬に触れてくるが、表情がすごく怖く、ゆらゆらと鬼神の気が漂っているようにも見える。