【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
このままでは、王太子殿下に直に問い質しに行きそうだ。
真実を訊き出すために、王太子殿下を脅すようなことはしないだろうが、一抹の不安が胸をよぎる。
焦りつつも答えを探していて、シルディーヌはふと思い出した。
王太子殿下が、“身も凍り付くような恐怖を感じる”と言っていたことを。
まさかあれはアルフレッドの……!
誰に対しても容赦がないなんて、やっぱり脅しに行きかねないのだ。
「え、えっと、この国の騎士団長の眼力の強さについて?……みたいな、話です」
ウソは言っていない。
だが、アルフレッドは怪訝そうな顔をしている。
これ以上追及されないように、なんとか気をそらさなくてはならない。
そう考えたシルディーヌは、カーネルに捕まえられていて赤くなった腕をアルフレッドに見せた。
「ね、アルフ、見て。私、アルフに助けられて、すごーく安心したら、急に腕が痛くなってきちゃったわ。ほら、赤いでしょう? 腫れているのも」
「なに!? それを早く言え。痕が残ったらどうするんだ!」
「きゃあっ」
シルディーヌは電光石火の早業で抱き上げられ、医療室に連れられて行く。
医官による手厚い治療を受けながら、シルディーヌは将来を思いやった。
うれしくも困ることが多々あるアルフレッドの強大な愛。
それを一身に受け止め続ける、とっても幸せで、ちょっと難儀な日々を──。
【完】