【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
アルフレッドは『浮ついている』と言ったが、とんでもない。
身の回りのことが自分でできるようになるのも、王宮侍女として働くことの利点だ。
これを機会に自立を考える令嬢がいるとも聞いている。
明日の準備が終わって髪も渇いた後、ベッドの上に身を投げ出すようにして横たわる。
今日一日で見聞きしたものはびっくりなことばかり。
それが全部アルフレッドに関するものだということが、なんともおかしなことだ。
「みんな騎士団員に恋をする……なんて、本当かしら?」
シルディーヌは、どんな人に恋をするのだろう。
まだ恋をしたことがなく、心の中がどんなふうに変化するのか分からない。
恋することにあこがれはあるが、サンクスレッドでは相手に恵まれなかった。
できるなら、優しくおおらかな心で包み込んでくれる殿方がいい。
そそっかしくて失敗しても咎めずに甘やかしてくれるような、年上の殿方がいい。
この王宮で、そんな人に出会えるだろうか。
まだ見ぬ素敵な貴公子を想像しつつ、シルディーヌは目を閉じた。