【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
王宮生活は前途多難
王宮侍女の朝は早い。
日が昇るのとほぼ同時に起きて、身支度を整えて朝食を済ませていなけらばならない。
王族の方や貴族院の方々が活動を始める頃には、傍で控えていなければいけないからだ。
侍女でこうなのだから、朝食を用意する厨房などは日が昇る前に起きているだろう。
昼夜交代制とは聞くが、大変な仕事だと思う。
そう思えば、焼き立てのパンを口にするにも、自然に感謝の気持ちがわいてくる。
サンクスレッドでのほほんと暮らしていたときは、そんなこと思いもしなかったこと。
ベーコン入りのスクランブルエッグにボイルキャベツとミルク。
いつもの侍女仲間と一緒にありがたく食べて、侍女長のところまで朝の挨拶に向かう。
まだ新米で正式に配属先が決まっていないので、今日の仕事内容を確認するためである。
本宮殿の一階隅にある執務室に伺うと、侍女長はすでに机に向かって書き物をしていた。
シルディーヌたちが挨拶をすると、侍女長はすくっと立ち上がった。
おくれ毛ひとつなくひっつめた髪は少し白髪が混じっているが、歳は四十半ばで未婚。
もともと伯爵令嬢だったが、王宮での侍女生活が性に合っていたためにずっと留まっていると自己紹介されている。
ビシッと姿勢正しくて威厳があり、シルディーヌたちも身を引き締めた。