【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「今日は、正式な配属先を申し渡します」
侍女長は、名を呼んで配属先を告げたあと、小さな書状を渡していく。
みんな昨日仕事をした場所が告げられているから、シルディーヌも西宮殿に配属されるはず。
いや西宮殿では仕事をしていないが多分きっとそうなる、と思っていたのだが……。
「シルディーヌ・メロウ。あなたは南宮殿です。アルフレッド・マクベリーさまに指示を仰ぎなさい」
「……え?」
耳にした瞬間にシルディーヌはカチンと固まった。
侍従でも先輩侍女でもなく、何故にアルフレッドのもとで働くことになるのだろう?
「まあ、南宮殿って『黒龍殿』ですわ」
キャンディが気の毒そうな声を出す。
すると、ペペロネが一歩前に出た。
「侍女長さま。質問があります」
「はい、ペペロネ、なんでしょう」
「南宮殿といえば、立ち入り禁止ではないのですか? 侍女侍従ともに、誰も立ち入ってはいけないと聞いています。どうして、シルディーヌが配属になるのでしょうか」
シルディーヌの気持ちやみんなの疑問を代弁する様に侍女長に尋ねてくれる。
侍女長は一歩前に出ているペペロネを下がらせると、ちらりとシルディーヌの方を見た。
「確かに南宮殿は立ち入り禁止です。ですが、宮殿内の清掃をする侍女がひとりほしいと、昨日マクベリー団長から希望がありました」
まあ、団長が自らいらしたの?と、囁きあうような声が上がる。