【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「さらに、新米の侍女を希望されました。あなたたちは、昨日の時点ですでに各担当長から合格のサインをもらっていますので、動かせません。ですが、シルディーヌは動かせる状態にあるということです。以上です」
これ以上は問答無用とばかりにきっぱりと言い、侍女長はシルディーヌに小さな書状を差し出した。
それを受け取ったシルディーヌは、書かれてある文字を眺める。
配属先が書いてあり、担当長の欄にはアルフレッドのサインがしっかりと記されていた。
「さあ、仕事を開始してください。しっかり、頼みましたよ」
侍女長のひと言で、それぞれの配属先に向かう。
みんなが軽い足取りで行く中、シルディーヌは重い足取りで黒龍殿へと向かった。
たどり着いた黒龍殿は、昨日とは違う様相を呈していた。
まず、正面入り口に団服を着た騎士が三人立っている。
入り口は階段を五段ほど上がった高さにあるが、三人の内ふたりは両サイドで背を壁に預けたような格好でいる。
なんだか不貞腐れているような感じに見える。
そしてもうひとりはほぼ真ん中で直立不動の姿勢でおり、近づいて行くシルディーヌに気づいたようで、階段を駆け下りて来た。