【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「侍女のシルディーヌ・メロウさんですね?」
「……はい、そうですが」
丁寧な口調に戸惑うシルディーヌに、騎士は胸に手を当ててスッと頭を下げた。
ナダールでの紳士が目上の者に対して行う挨拶で、シルディーヌも慌てて礼をとった。
「私は黒龍騎士団の副団長を務めているフリード・ラッセルと申します。団長が上でお待ちです」
フリードはアルフレッドに負けないくらい背が高く、黒い髪に黒い瞳でかなりの美丈夫だ。
立ち居振る舞いもスマートで、おそらく貴族騎士だろうと思われる。
昨夜ペペロネが言っていた、騎士団員は荒くれ者ばかりじゃないというのは本当らしい。
入り口のホールには、帯剣している数人の騎士がいた。
今から出掛けるところなのか、外套を着て何やら話をしている。
フリードと一緒にいるシルディーヌを認めると、きょとんとした表情で互いに顔を見合わせたあと近づいてきた。
「副団長、その子はどうしたんです?」
「どこで捕まえてきたんすかあ?」
「尋問なら、俺、手伝いますよ!」
さすが騎士たちと言うべきか、動きが素早く、シルディーヌはあっという間に囲まれてしまった。
アルフレッドほど巨大ではないがガタイのいい男たちで、かなりむさくるしい。
「お前らは寄るな。この方は犯罪者じゃない、団長の客だぞ」
「げげ、団長の!? マジ?」
「へえ、女の客とは珍しいっすね」
「副団長、もしかして、団長の女ですか?」
「あんた、名前は?」