【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
ギラギラとした興味津々な目を向けられて、シルディーヌは顔を引きつらせた。
「わ、私は、彼女じゃないですっ」
「客だって言っているだろう。お前らは早く任務に行け。団長に殺されるぞ」
フリードに命じられ、騎士たちはつまらなそうに返事をしてホールから出て行った。
「すみません。ここに外部の人が入ることがないから、珍しいんですよ。まれに、国家警備隊が扱いに困った凶悪犯罪者が連行されてくるくらいで」
「え! 凶悪な!?」
「大丈夫ですよ。団長が尋問するとすぐに大人しくなるので」
「はあ、そう、なんですか……」
アルフレッドは、いったいどんな尋問をするのか。
昨日シルディーヌが受けたものとは、次元の違う恐ろしさということだけは分かる。
黒龍殿は、思っていたよりも遥かにとんでもないところだ。
シルディーヌは心底逃げ出したくなるのをぐっと堪え、前を歩くフリードに声をかけた。
「あのっ、質問してもいいですか?」
「はい、どうぞ。私でお答えできることであれば」
「騎士の方々は普段どこにいるんですか?」
「本部に控えている者もいますが、大抵任務についています。取り締まりに出ていたり、要請があれば、王太子や宰相の警護などにもいきます」
「……昨日は?」
「そういえば、昨日はほぼ全員出ていましたね。たまにあるんですよ」
フリードは二階廊下を歩きながら早口で説明し、シルディーヌを団長部屋へ入るように促した。