【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


「私が膨れているのは、全部アルフのせいよ」

「ワケを言ってみろ。朝と同じことなら聞かないぞ」

「全然同じじゃないわ! 進化してるもの!」


シルディーヌは、まず食堂の汚さを切々と語る。

いろんなものが出しっぱなし置きっぱなしで、どれが誰のものか分からない。

捨てていいのか、残しておくのか。

まるで物置部屋のようで、物を動かしたら、ネズミやガサガサと動く黒いあいつが出そうで怖い。

……などなど、ひとりで掃除するのは大変だと訴えた。


しばらく黙って聞いていたアルフレッドは、ゆっくり口を開く。


「ふん、お前は、甘いな。仕事は厳しいもんだ。侍女として掃除ひとつできないなら、サンクスレッドに帰るんだな」

「イヤよ! 絶対帰らないわ。アルフはワケを知っているでしょう?」

「それなら、どんな仕事でも頑張るしかないだろう。仕事は、お前のためにあるものじゃない。仕事があるから、お前が必要なんだぞ。勘違いするな」

「そ、それは……そう……」


アルフレッドの言うことはもっともで、シルディーヌは反論できない。

子爵の令嬢でこれと言った苦労もしていなく、したと言えばイジワルアルフの標的になったことくらい。

確かに考えが甘いのだ。


「……ごめんなさい。アルフの言う通りだわ。お掃除頑張る。仕事だもの。でも、アルフに文句は言ってもいいでしょう?」


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