【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


しゅんとしつつも上目遣いにすると、アルフレッドは口を押さえてふいっと横を向き、もごもごと言った。


「仕方がないから、聞いてやる」


なんだか、アルフレッドの様子がおかしい気がする。


「アルフ?」


シルディーヌが顔を覗き込もうとすると、アルフレッドは「ただし愚痴は言うな」ときっぱり言って向きなおり、肘掛けに頬杖をついた。

もういつものワイバーンなアルフレッドで、顔が赤く見えたのは錯覚だったよう。


「……それで? 全部俺のせいだと言っていたが、話は終わりなのか」

「ううん、まだあるわ」


シルディーヌはアクトラスにスパイと間違えられた話を始める。

口を塞がれて苦しかったこと。

ひょいっと担がれて尋問部屋に連れていかれそうになったこと。

それらを詳細に語ると、アルフレッドの機嫌がどんどん悪くなっていった。


「……で、その、お前を担いだ騎士は誰だ」


声にトゲがあり、シルディーヌはたじろいでしまう。

どうしてそんなに怒っているのか。


「えっと、フリードさんは、アクトラスと呼んでいたわ。すぐに下してくれて、謝ってくれたけれど、そのおかげで変な誤解をされちゃったの」

「ほう……アクトラスか。三番隊の隊長だな……」


この話のメインは、アルフレッドが侍女が来る話をしておかなかったことと、妙な誤解を生んでしまったことだ。

しかし、その肝心な部分をあまり聞いていていなく、顎をさすってなにかほかのことを考えている様子だ。


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