【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「お前は、無防備すぎる」
そう囁いて抱く腕を締めるから、胸が苦しくなってきた。
室内鍛練場の壁を粉々にした力が体を襲っている。
三度命の危機を感じて、なんとか声を絞り出して訴えた。
「ま、待って。アルフ、息ができないわ」
「危ないと分かったか。俺の女ということなら、団員らは手出ししないぜ。どうする?」
「わ、分かったわ。しばらく否定しないでくださいっ」
「いいんだな?」
シルディーヌが何度もうなずくと、ようやく解放された。
危機から脱し心底から安堵していると、アルフレッドは向かい側のソファに戻り、スッと手を出した。
「なに? 握手するの?」
「違う。清掃スケジュールを出せ」
「あ、そうよね。すっかり忘れていたわ」
シルディーヌはエプロンのボケットを探り、スケジュール表を出した。
外を見れば、もうすっかり日が落ちていた。