【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


「お前は、無防備すぎる」


そう囁いて抱く腕を締めるから、胸が苦しくなってきた。

室内鍛練場の壁を粉々にした力が体を襲っている。

三度命の危機を感じて、なんとか声を絞り出して訴えた。


「ま、待って。アルフ、息ができないわ」

「危ないと分かったか。俺の女ということなら、団員らは手出ししないぜ。どうする?」

「わ、分かったわ。しばらく否定しないでくださいっ」

「いいんだな?」


シルディーヌが何度もうなずくと、ようやく解放された。

危機から脱し心底から安堵していると、アルフレッドは向かい側のソファに戻り、スッと手を出した。


「なに? 握手するの?」

「違う。清掃スケジュールを出せ」

「あ、そうよね。すっかり忘れていたわ」


シルディーヌはエプロンのボケットを探り、スケジュール表を出した。

外を見れば、もうすっかり日が落ちていた。

< 47 / 202 >

この作品をシェア

pagetop