【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


しかし騙されたとすれば、どうして否定するのを拒んだのかが謎になる。

首をひねってしまうが、イジワルアルフのことだ。シルディーヌが婿探しに困る姿を見て、楽しむつもりに違いない。

なんてドSな男なんだろうか……。


「シルディーヌさんを思い通りにっすか……想像するに、団長は激しそうですね。いや、違うな。シルディーヌさんには優しいんだろうなあ」


なにを想像しているのか分からないが、アクトラスは赤い顔をして天井の方を見、ごくんと唾をのんでいる。


「なにを言っているの? アルフは優しくなんかないわ。すごくイジワルなんだもの」

「そうですかねえ。俺には、シルディーヌさんにデレデレのメロメロに思えます」


そう言いながら、アクトラスは額の赤いアザを撫でている。

腫れてたんこぶみたいになっているそれは、昨夜アルフレッドに呼び出されてデコピンされたものだと言っていた。

どうしてデコピンされたのか詳細を尋ねたら、無実のシルディーヌを犯罪者扱いし、問答無用で担いだ罰だということだった。

その時のアルフレッドの雰囲気と言葉が口では言い表せないほどに恐ろしく、されたのはデコピン一回でも心理的には大変なダメージを受けたらしい。

なにを言われたのか尋ねても口を固く閉ざしていたが、クマみたいに大きな体がぶるっと震えたのを見、シルディーヌはとても気の毒に思ったのだった。


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