【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「いえ、そんな。俺は……えへへ」
アクトラスは照れるように笑って、頭をばりばりと掻いた。
そして「あーいや、これは、団長がデレる気持ちが分かるなあ」などとブツブツ言っている。
「……え? デレル?」
「いえ、気にしないでください。しかし、これを保たなくちゃ話にならないですねえ」
「そうね、でもこれから毎日お掃除するから、きっと大丈夫だわ」
ふたりがとんでもない達成感と満足感に酔いしれていると、団員たちが戻って来た。
みんな綺麗になった食堂を見まわして、呆気に取られているようで声も出さない。
「おい、お前ら。シルディーヌさんに感謝しろよ。手伝いをしたこの俺にも、だ。そして、この状態を保つように協力しろ。分かったな!?」
団員たちはアクトラスの言葉によって、「了解!」と言ってダン!と足を踏み鳴らし、シルディーヌに向かって敬礼をした。
そんな団員たちの様子を見ると、シルディーヌは、害虫などの問題はあれども清掃の仕事も悪くないと思ったのだった。