メープル*パンケーキ【2巻】*Happiness story*

スマホからは幾斗の足早な足音が聴こえる。
私は私で部屋の前の通路から道路を見下ろすと、一台のタクシーが走ってくるのが見えた。

一段一段階段を降りていくと丁度アパートの前に停車していた。

「お節介かもしれないし、部外者かもしれないけど。タクシーとはいえこんな時間に彼女を一人にさせたくないし…俺ね、お父さんにも会いたいんだ。」

『え?』

黙って聞いていたけど、その言葉に首をかしげてしまう。

「…この前、夏音の家に遊びに行った日あるでしょ?あの日の帰りにお父さんに会釈した時さ、ちょっとだけニコッてしてくれたんだ。帰る直前まであんなに微妙で気まずい雰囲気MAXだったのに、柔らかく、笑ってくれた。」

『…そうだったの…?』
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