メープル*パンケーキ【2巻】*Happiness story*
「…うん。前に話したけど、俺には両親って呼べる人が今居ないじゃん?だけどさ、夏音のお父さんって暖かいお父さんって感じがして…息子になりたいって思った。」
『…幾、斗。』
「…時間はかかるかもしれないけど、認めて欲しいんだ。もちろん、お母さんやお姉さんにも。」
こんな状況なのに胸がきゅんとしてしまうのは不謹慎かもしれないけど…幾斗は本当に優しい人で、家族思いな人なんだと身に染みる。とても心強いから。
『ありがとうっ…幾斗。…本当はね一緒に来て欲しいなって思ってた。…本当は…一人で行くの怖かったから…』
「─大丈夫だよ、傍に居るから。」
その時、やけに幾斗の声が二重に聞こえた。スマホから聴こえる少し籠った声と、はっきりした生声。タクシーの方を見るとスラリと伸びた長身の影。少し息を切らして立っている幾斗の姿があった。