幼馴染は関係ない
11話
ヘアサロンでヘアメイクと着付けをしてもらい、そこから直接タクシーで式典会場へ。
すると会場の入り口に竜生が立っていた。
「おい! 遅い!」
「え? ごめん・・・もしかして待っててくれた?」
「中学校の仲間はだいたいみんな来てる」
「そっか、久々だな~ みんな綺麗だった?」
「は?」
「みんな振袖姿だったでしょ?」
「それより、梶の紋付き袴姿の方が・・・あの気合いに圧倒されたな」
女性より男性の印象が残るなんて竜生は本当に恵まれている。
きっと、同級生の女性より綺麗な人がいつも周りにいるからなんだろう。と思った。
「そうなの? 竜生はスーツなんだね?」
「来年には就活あるしスーツが合理的だろ?」
「男の人はそうだよね?」
新君もスーツだって言っていた。
きっと、素敵なんだろうな~。
「お前は着物・・・」
無言!? こんな時でさえ褒められないの!?
「馬子にも衣装でしょ?」
「・・・別に」
がっくり・・・別にってどういう意味?
後で母に写メ撮ってもらって新君に送信しようと思ってたのに、テンション下げさせないでよ。

それからみんなと一緒に式典に出席して、少し話をして、着替えてから夜に飲みに行こうと約束した。
私が帰りもタクシーだと言うと、竜生は、
「どうせ同じトコなんだから一緒に行くぞ」と言って同じタクシーに乗り込んできた。
みんなに冷やかされて私は焦る。
竜生と私だよ!? 何その冷やかしはっ!? あり得ないでしょ!?

タクシーから降りてエレベーターの中で、
「店にも一緒に行くぞ」
と言われた。
「大丈夫だよ。 あの店知ってるし」
と答える。
だって、同じ時間にでかける約束なんてしたら「遅い」とか叱られそう。
「どうせ行き先一緒なら一緒のほうがいいだろ?」
「でも、竜生の出る時間に出られないと思う」
私だって化粧直しとか色々あるんだから。
「・・・待っててやるから」
と竜生はポツリと言った。
私は唖然。
・・・竜生どうしたの!? 何か悪い物でも食べた?
竜生の口から私を「待っててやる」なんて台詞が出たなんて信じられない。

家に帰ると父と母は私の着物姿をとても嬉しそうに眺めてから、予約していた近所の写真館に三人で向かった。
父も母も一張羅を着こんでいる。
私だけの写真と家族写真を撮った。
「仕上がりが楽しみだな?」
「本当ね。 花音も成人したのよね~」
「お母さん、それ、私の二十歳の誕生日にも言ってたから」
と笑った。

着物を脱ぐ前に母に写メを頼んだ。
全身が写る様に。
式典会場で友達とも写真を撮ったけど、それは顔中心。
これは新君に送信する用。
「すごく可愛く撮れたわよ~」
「ありがとう」

着替え終わってから新君に写メを送信した。
するとすぐに電話がきて、
「かわいい!かわいい!!かわいい!!!
今すぐ抱きしめたい!!!!」
と熱烈に言われ私は噴出してしまう。
「プッ ありがとう  後で中学の同級生と出掛けるんだけど、新君は?」
「僕もこっちで大学の友達と出かける。 
中学の同級生って事は僕の知ってる人も居るよね?」
「うん、だいたいは小学から同じ人だから新君も知ってる人ばかりじゃないかな?」
「上尾君も?」
「竜生も」
「そっか・・・」
「え? 竜生の事、まさかまだ拘ってる?」
「いや。 そうじゃないけど・・・」
「竜生にとって私はダメな幼馴染。 私を相手にするなんてあり得ないよ?」
「本当にそうなのかな?」
「うん、絶対」
それに、今は彼女がちょっと途切れているみたいだけど、ずっと可愛い子としか付き合っていない様な人だもん。 私を恋愛対象にする訳ない。
「家が近いから送るとか言われても絶対断って」
と新君。
え・・・と、それは難しいかな? 同じマンションだし・・・。
「竜生は同じマンションに住んでて・・・」
「え?」
「言って無かったよね?」
「聞いてない」
不機嫌そうな新君。 どうしよう。 これは、時々気まぐれに家に遊びに来てます。なんて言ったら嫌われちゃう!?
「・・・竜生は、本当に友達で。 しかも仲良しのっていうより仲はあまり良くない友達で・・・でも、竜生と同じ学校に進学した友達の話を聞いたりするのに会ってる」
「え? 会ってるってどういう意味? 二人でって事?」
「・・・そう」
「僕と付き合いだしてからも?」
「・・・うん」
「・・・今も?」
「あ、うん」
「ごめん、僕・・・ちょっと、意味が分からない」
「え? 新君!?」
電話は切れてしまった。

どうしよう。
これは、私と竜生の仲を誤解してるよね?

私が悪いんだ。
だって、今まで竜生が時々家に上がっていくことを言わなかったのは私のずるさだから。
竜生と会っている事を新君が知ったら、嫌な思いするかな?なんて事を思った訳じゃ無くて、私がしていることを自分もしてもいいでしょ?と新君に言われたくなかったから。
私と竜生が家で会っている・・・。
だから、新君も他の女性と家で会ってもいいでしょ?と。
新君は北海道に越して行ったのだから、幼馴染なんて存在しない。
家に二人で過ごしたら、私と竜生の様にただ話をするだけの関係で済まされないと思ってしまう。
それなら、竜生を家に上げなければいいのに、ついついみんなの話を聞きたくて・・・。
私がずるいからこんな風に新君に誤解されるし、嫌な思いもさせてしまったんだ。

・・・今日 新君は飲み会なんだよね。
もしかしたら、そこで他の女性に誘われて、そのまま・・・何て事になったりして?
浮気している私なんかよりその人の方がいいって思ったりして?

嫌だ!!!
そんなの嫌!!!
私は浮気なんてしていない。
好きなのは新君だけ。 それを伝えなきゃ。

私は新君に電話する。
何回コールしても新君は出てくれない。
どうしよう。どうしらいい!?

何度も何度も電話を鳴らす。
そして、新君が
「・・・はい」
と根負けして出てくれた。
「新君、好き」
と一言。
「花音・・・」
「好きなの・・・好きな人は新君だけ。 竜生なんてただの近所の人」
「何もないの?」
「何があるの?」
お願い誤解しないで。
「二人で会ってるってデートしてるんだよね?」
「出かけたことなんて無い」
「え?」
「家に来るの」
「・・・部屋?」
新君の声が冷たい。
「私の部屋に入れるのは新君だけだよ? 竜生はリビング」
「家族ぐるみで仲イイの?」
「うん。 竜生は親が居ない時でも居る時でも普通に家のリビングで自慢話とか友達の話をして帰っていく」
「親が居ない時・・・何もされないの?」
「そんな事、心配した事もない」
「そういう信頼関係なの?」
「信頼関係・・・そうかも、竜生をそういう意味では信頼してる」
私を性的な目で見ることは絶対に無いって。
「キスもしたことない?」
「無いよ!!! なんで!? 私、キスも全部 新君としかしたことないよ!!!」
そう叫んでしまった。
ヤバッ。 家に両親がいるのに・・・。
< 11 / 26 >

この作品をシェア

pagetop