幼馴染は関係ない
20話
☆主人公視点に戻ります。


「花音を俺に返してくれ!」

え?
リビングのドアの前で私は固まる。
竜生、何を言ってるの!?
返すって何!?
あまりの驚きに私は身動きが取れない。

新君と竜生はその後も会話を続けている。
私は動揺しながらもその会話に耳を傾けた。
新君から聞いたこともない様な怒っている声。

「俺にとって花音は家族になる女だと・・・そう思ってきたから」
竜生・・・どうしちゃったの?
「・・・え?」
「中元はそこまでの気持ち、無いだろ?」
「ちょっと待ってよ! 上尾君には彼女が居たって聞いたよ?
花音は、上尾君が自分を恋愛対象になんて見ていないって言っていたんだ・・・」
新君の台詞に私はハッとする。
そうだよ。 私と竜生に恋愛感情は全くなかった。
竜生の言う 私と家族になるっていうのは夫婦って意味では無い。
私、何を動揺してるのよ全く。
きっと、竜生は私を妹とか娘とかって気持ちなんだから。
娘を嫁に出す父親の気持ちにでもなってるんじゃないの?

私は思いっきりリビングのドアを開けた。
「竜生、いい加減にして!!!」
「っ!? 花音・・・」
竜生が悲壮感たっぷりの顔でこちらを見た。

私は新君の隣に座る。
「あのね、私を竜生に返すなんておかしいでしょ? 私は一度として竜生の物になんかなった事ないんだから。 それに私は人間であって物じゃないよ」
「それは・・・」
「それに、竜生とは幼馴染だから新君より出会うのは早かったけど、家族だとか思った事無い」
「・・・」
「うちの親は、竜生を私のお兄さんみたいって言ったりして、家族の一員って感じで接していたけど、私は竜生をお兄さんだなんて思った事ないから」
私が言うと、新君は、
「家族でも無い男の人を、誰もいない家に上げて・・・そのへんはどう思ってたの?」
と訊いてきた。
「前も言ったけど、竜生とは赤ちゃんの時からの知り合いだから、性別関係なく、一緒にいる事に慣れてたの・・・お互いに何も感情が無いんだから、何か間違いが起こるかも?なんて思ったこともなかった」
「信頼してたって言ってたもんね?」
と新君に言われて私は頷く。
「上尾君、花音はこう言ってる。 もういいよね?」
「・・・だけど・・・」
まだ竜生は何か言いたそう。
「竜生、私 新君と結婚するよ?」
「は?」
驚いた表情の竜生。
「さっきさ、新君に私と家族になろうっていう気持ち無いだろ?みたいなこと言ってたよね?」
「あ、そういえば言われた・・・」
と新君。
「その質問の返事してなかったね。 僕と花音は結婚しようって約束してる」
と新君は竜生に向かって言ってくれた。
凄く嬉しかった。
「・・・なんで、結婚・・・なんで、花音なんだよ!?」
竜生が興奮した様に新君の胸倉を掴んだ。
「竜生!?」
「なんで花音と結婚するだなんて思うんだよ!? お前ならもっとイイ女と結婚できるだろ!?」
新君を掴んでいる腕を前後させながら竜生は続けた。
「やめてよっ!」
私は竜生の腕を抑えるけど・・・。
「上尾君。 僕達が結婚したいって思ってるのに、どうして納得してくれないの?」
新君はとても冷静。
なんだか私の方が感情が高ぶってしまう。
「竜生なんて関係ないっ!!!」
「花音?」
驚いた顔をする新君と竜生。
「竜生なんて関係ないじゃないっ!  私は新君が好きで、新君も私を好きだって言ってくれてる。
それが私達二人にとっての全てだよ! 竜生が新君の気持ちを疑うとかそんなの余計なお世話っ!
私が一番知ってる・・・新君と自分が似合わないって事。
だけど、それでも一緒に居たい。 別れたくない。 結婚したいって思うのは私の自由でしょ!?」
私は感極まって涙が溢れてしまう。
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