幼馴染は関係ない
23話
「竜生・・・ごめん。 もう二人で会ったりできない」
私はハッキリと告げた。
今まで、お互いに恋愛感情が無いから。 共通の友達の話ができるから。と竜生と二人で会うことになんの躊躇いもなかった。
もちろん、竜生が自慢話をする時は、嫌だな。と思ったりしたけど、根本的に本気で「もう二度と来ないで!」とは思っていなかった。
「・・・」
黙ってしまった竜生。
その時、
「ただ~いま~」
と明るい声で母が帰宅した。
リビングに顔を出した母は、
「中元君、いらっしゃい。 竜生君も来てたのね? 二人が一緒なのって初めてよね?」
と満面の笑み。
「お邪魔しています」
と頭を下げる新君。
「花音たら、こんなにお付き合いが順調なんだからとっくに竜生君に中元君との事を教えてるって思っていたんだけど、言ってなかったんですって。 中元君、知ってた?」
と母は苦笑。
「そうだったんですね・・・」
と新君も苦笑。
「だって、私の事馬鹿してばかりの竜生に、こ~んなカッコイイ彼氏が居るって言っても『身の程知らず』って言われそうで・・・」
「ほんと、自分に自信のない子ね」
母は呆れ顔。

竜生がポツリと母に言った。
「俺と・・・花音がくっつけばなんて、思ってなかった?」
竜生!突然何を訊いてるの!?
「花音と竜生君?・・・えっと・・・そんな事思った事、無いかな?」
母の答えにホッとした。
「そっか・・・」
「竜生君にとって花音は手のかかる妹とか、お茶出しをさせる家来?みたいな存在だったでしょ?
そんな恐れ多い事思って無かったわよ。
私達がドジな花音の面倒を同級生の竜生君にお願いしちゃったんだから、竜生君には悪い事しちゃったなと思ってたくらいよ」
と母はすまなそうな顔。
「悪くなんてないけど・・・」
「竜生君には綺麗な彼女が居るって聞いた時、 ああ やっぱりな。 竜生君は花音みたいな子は眼中にないって早い段階で気づいてたし。
それに、花音にも中元君ていうもの凄く素敵な彼氏ができたしね」
当たり前みたいに言った母。
竜生は、
「やっぱり俺は全部・・・全部間違ってたんだ・・・」
と呟く。
「間違ってたって何?」
不思議そうな母。
「なんでもないっす」
と俯く竜生。
「それより、貴方たち、今日もお友達と会うんでしょ? 何時から?」
母にそう訊かれて時計を見る。
「え? あっあと1時間くらいで出なきゃ。 それまでにご飯食べなくちゃ」

竜生は肩を落として帰って行った。
母は、「夕食一緒に食べていかない?」と訊いていたけど、竜生は断っていた。

時間がないから、私はチャーハンとスープだけ作って新君と二人で食べた。
母は、煮物と焼き魚を作っている。

「いってきます」
「帰りはきちんと送ってきます」
新君が母に言う。
「中元君はお爺さんの家に帰るの? 遠回りでしょ?」
「いえ」
と新君は苦笑。 遠回りどころかお爺さんの家は反対方向。
「うちは何時でも泊まってくれていいのよ?」
と母。
「え?」
私も新君も驚いてしまう。
「たまにしか帰省しないお孫さんがせっかく泊まるんだからお爺さん方も楽しみにしているだろうって、言った事なかったけど、今日みたいに帰りが遅くなりそうで、花音を送ってくれる気がある時はうちに泊まってもいいのよ?」
「そんな訳には・・・」
新君は困った顔。
「ま、そうね。 中元君ならそう言うと思ったけど」
と母は笑った。
・・・なんだか、新君を試してる?と思う様な事言うのやめて欲しい。

それから中学の友達と待ち合わせたお店へ。
店内に入るとほとんどの人が集まっていた。
皆、新君と会える事 そんなに楽しみだったのか~と嬉しくなる。
・・・でも、女性の皆さん? やけに気合い入ってませんか?

「上尾君、まだみたいだね?」
新君に言われて私は店内を見渡すけど、竜生の姿は無かった。
時間を守るタイプなのに珍しいな・・・。

「新くぅ~ん」
「新君、久しぶり」
「すっごい背が高くなったんだね?」
「相変わらずカッコイイね?」
と女性陣に囲まれてしまった新君。
新君の腕にそっと手を添えている子まで!?
や~め~て~!!!
私が悶々としながら新君を見ていると、笑顔のままで、自分の腕にある手をそっと離している。
柔らかい話し方、素敵な笑顔・・・だけど、新君は女性とある一定の距離を取って接しているみたい。
・・・北海道でも、こんな感じなのかな?
そう思うと少し嬉しかった。
押しの強い女性に言い寄られたら、新君はちゃんと断れるのかな?と不安だったから。
私の事を好きだと思ってくれているって分かっていても、新君の身体に無断で触れる女性が居るのでは?と本当に不安で・・・。
酔った振りした女性が急にキスしたりして?とか。
いつでも電話くれるから、誰かと一晩一緒 という事は無いと信じているけど、キスくらいなら・・・飲み会の席でされているかも・・・と落ち込んでしまう時がある。
私は飲み会に出てもそんな事された経験ないんだから、新君もそんな事されてない!って思う気持ちと、私と新君は全然違うじゃない!?
私にキスしたい人はいなくても、新君にキスしたい人はたくさんいるでしょ!?と考えてしまったりして・・・。

だけど、新君はいつもこんな風に女性に期待させない様に、やんわりと拒絶を表しているのかも。
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