幼馴染は関係ない
9話
私はバスに飛び乗った。
いつもバイトに行く時と同じ路線のバスに乗って、いつも降りる大通りを乗り越し、3つ目のバス停で新君が乗ってきた。
「こっちこっち」
私は座席から少し腰を浮かせて新君を手招きする。
「花音おはよう」
「おはよ。 おじいさんのお家ってこの辺?」
新君のお家は引きはらっている。 だから今回の帰省はお父さんの実家に泊まっていると聞いていた。
元のお家へは何度か遊びにいかせてもらったけれど、大通りから1つ目のバス停だった。
「そうなんだ。 姉さんの家もそんなに遠くないよ」
「私の高校の近くじゃないの?」
私は学校へは地下鉄を使っている。
「姉さんの勤務先と学校の間位に住んでるんだ」
「へ~、そうだったんだ?」
初めてお会いした新君のお姉さんはとても美人で、新君のお姉さんって感じでふんわりと優しい印象。
隣に座る楠木先生のデレデレ加減に若干引いた・・・。
「新、大学はどうするの? こっちに戻ってくるんでしょ?」
お姉さんが新君に訊く。 私もすごく気になっている内容だったので、静かに新君の返事を待った。
「・・・実は、父さんも母さんも 北海道の大学を受験しろって言ってるんだ」
「え?」
私がつい声を上げてしまう。
「やっぱり僕が学生の間は一緒に暮らしたいって・・・」
と新君は俯く。
毎日電話していたのに、そんな話は聞いていなかった。
「そう、親はそう思ってるわよね? 新は私より8つも下だし、可愛くて仕方ないって育てられたしね。
・・・新が将来なりたい職業に必要な事を学ぶのはどこの大学でもいいと私は思ってる。
でも、花音ちゃんは寂しいでしょ?」
とお姉さんは私の顔を見つめた。
「あ・・・でも・・・」
新君のご両親の気持ちを考えたら、私ばかりが我儘言えないと思った。
「僕は、バイトするから一人暮らしか下宿させて欲しいって頼んでるんだけど・・・まだいい返事もらってないんだ」
と、新君は苦笑しながら私を見た。
新君は私の為にこっちの大学に入学したいの?
自分の為じゃなく?
・・・それって、なんだか、私はただのお荷物の様な気がした。
その後、私のバイト先である喫茶店の話が出た。
「花音ちゃん、あの喫茶店でバイトしてるって本当?」
「はい」
「懐かしいなぁ。 結婚してからは行ってないの」
「まぁ、待ち合わせする必要ないしな~」
と楠木先生。 非常に現実的な発言に私は苦笑。
「今度、行ってみましょうよ」
とお姉さん。
「そうだな。 行ってみるか?」
楠木先生も楽しそうに笑っている。
なんだか、幸せそうでとても理想的な関係だな。・・・いいな。と思った。
「花音ちゃん、会えて本当に嬉しかったわ。 またいつでも遊びに来てね?」
とお姉さんは笑う。
「ありがとうございます。 お邪魔しました」
私はお辞儀してお姉さんと楠木先生にお礼を言った。
「後でおじいさんの家に二人で伺うから、新君、また後で」
と楠木先生。
「はい」
と新君は笑った。
「どっか行こうか?」
「うん。 どこに行く?」
「水族館は?」
そこは駅に併設されていて、新君が引っ越す前にも一度行った場所。
しかも、初めてキスした場所だった。
「あ・・・うん。 行く」
暗い照明で、人が少ない日だった あの日。
私達は小さな水槽の前で「かわいいね」と言い合うと、思いのほか顔が近づいていて私は赤面してしまった。
新君は繋いでいた私の手を強く握って、そのまま ふにっと唇同士を触れ合わせた。
目を瞑ることもできなかったあのキス。
新君の瞑った瞼と長い睫毛だけが私の視界に入ってきていた。
あれからまだ1年も経っていないのに、新君とのキスに慣れ、それ以上の関係を持っている。
遠距離恋愛とは言っても、毎日電話がくるし、新君の気持ちが変わっていないのだと今回会って実感している。
水族館に行く前に軽くご飯を食べた。
水族館は前に来た時よりも随分と混んでいた。
二人で手を繋ぎながら回る。
・・・でも、前みたいにゆっくりと、とは行かなくて。 少し寂しい気持ちになった。
「送るね」
「ううん、ここでいいよ。 新君 遠回りになっちゃう」
「花音・・・また暫く会えないけど・・・」
「うん。 大丈夫。 私は新君を待ってるから」
「大学、こっちに来れる様に頑張るから」
「あ・・・その事なんだけど」
「ん?」
「新君が無理しないで勉強できる環境って北海道じゃないの?」
「え?」
「一人暮らしするって言っても簡単じゃないでしょ? バイト、かなりしないとダメなんじゃない?」
「そうかも・・・」
「そしたら、勉強する時間に寝ちゃったりしないのかな?」
「・・・」
「新君の事、待ってる・・・それは、高校卒業までなんて期限つけたつもりないよ?」
「花音・・・それって、僕がこっちに戻ってくるのを何年でも待ってくれるってこと?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「僕が傍に居なくても、他の人に心開かない?」
新君は不安そうな顔をする。
私は昨日貰ったネックレスを首から取り出して、
「約束したでしょ? 私より、新君の気持ちの方が変わらないか不安」
と苦笑した。
「僕は花音が好き。 毎日毎日花音の声を聞かないと寂しいくらい、花音が好きなんだ」
「うん」
「・・・待ってて。 何年経っても花音をお嫁さんにするから」
そう言って私をふわりと抱きしめてくれた新君。
私はただ固まった。
お嫁さん? 話、飛びすぎじゃない?とパニックです。
いつもバイトに行く時と同じ路線のバスに乗って、いつも降りる大通りを乗り越し、3つ目のバス停で新君が乗ってきた。
「こっちこっち」
私は座席から少し腰を浮かせて新君を手招きする。
「花音おはよう」
「おはよ。 おじいさんのお家ってこの辺?」
新君のお家は引きはらっている。 だから今回の帰省はお父さんの実家に泊まっていると聞いていた。
元のお家へは何度か遊びにいかせてもらったけれど、大通りから1つ目のバス停だった。
「そうなんだ。 姉さんの家もそんなに遠くないよ」
「私の高校の近くじゃないの?」
私は学校へは地下鉄を使っている。
「姉さんの勤務先と学校の間位に住んでるんだ」
「へ~、そうだったんだ?」
初めてお会いした新君のお姉さんはとても美人で、新君のお姉さんって感じでふんわりと優しい印象。
隣に座る楠木先生のデレデレ加減に若干引いた・・・。
「新、大学はどうするの? こっちに戻ってくるんでしょ?」
お姉さんが新君に訊く。 私もすごく気になっている内容だったので、静かに新君の返事を待った。
「・・・実は、父さんも母さんも 北海道の大学を受験しろって言ってるんだ」
「え?」
私がつい声を上げてしまう。
「やっぱり僕が学生の間は一緒に暮らしたいって・・・」
と新君は俯く。
毎日電話していたのに、そんな話は聞いていなかった。
「そう、親はそう思ってるわよね? 新は私より8つも下だし、可愛くて仕方ないって育てられたしね。
・・・新が将来なりたい職業に必要な事を学ぶのはどこの大学でもいいと私は思ってる。
でも、花音ちゃんは寂しいでしょ?」
とお姉さんは私の顔を見つめた。
「あ・・・でも・・・」
新君のご両親の気持ちを考えたら、私ばかりが我儘言えないと思った。
「僕は、バイトするから一人暮らしか下宿させて欲しいって頼んでるんだけど・・・まだいい返事もらってないんだ」
と、新君は苦笑しながら私を見た。
新君は私の為にこっちの大学に入学したいの?
自分の為じゃなく?
・・・それって、なんだか、私はただのお荷物の様な気がした。
その後、私のバイト先である喫茶店の話が出た。
「花音ちゃん、あの喫茶店でバイトしてるって本当?」
「はい」
「懐かしいなぁ。 結婚してからは行ってないの」
「まぁ、待ち合わせする必要ないしな~」
と楠木先生。 非常に現実的な発言に私は苦笑。
「今度、行ってみましょうよ」
とお姉さん。
「そうだな。 行ってみるか?」
楠木先生も楽しそうに笑っている。
なんだか、幸せそうでとても理想的な関係だな。・・・いいな。と思った。
「花音ちゃん、会えて本当に嬉しかったわ。 またいつでも遊びに来てね?」
とお姉さんは笑う。
「ありがとうございます。 お邪魔しました」
私はお辞儀してお姉さんと楠木先生にお礼を言った。
「後でおじいさんの家に二人で伺うから、新君、また後で」
と楠木先生。
「はい」
と新君は笑った。
「どっか行こうか?」
「うん。 どこに行く?」
「水族館は?」
そこは駅に併設されていて、新君が引っ越す前にも一度行った場所。
しかも、初めてキスした場所だった。
「あ・・・うん。 行く」
暗い照明で、人が少ない日だった あの日。
私達は小さな水槽の前で「かわいいね」と言い合うと、思いのほか顔が近づいていて私は赤面してしまった。
新君は繋いでいた私の手を強く握って、そのまま ふにっと唇同士を触れ合わせた。
目を瞑ることもできなかったあのキス。
新君の瞑った瞼と長い睫毛だけが私の視界に入ってきていた。
あれからまだ1年も経っていないのに、新君とのキスに慣れ、それ以上の関係を持っている。
遠距離恋愛とは言っても、毎日電話がくるし、新君の気持ちが変わっていないのだと今回会って実感している。
水族館に行く前に軽くご飯を食べた。
水族館は前に来た時よりも随分と混んでいた。
二人で手を繋ぎながら回る。
・・・でも、前みたいにゆっくりと、とは行かなくて。 少し寂しい気持ちになった。
「送るね」
「ううん、ここでいいよ。 新君 遠回りになっちゃう」
「花音・・・また暫く会えないけど・・・」
「うん。 大丈夫。 私は新君を待ってるから」
「大学、こっちに来れる様に頑張るから」
「あ・・・その事なんだけど」
「ん?」
「新君が無理しないで勉強できる環境って北海道じゃないの?」
「え?」
「一人暮らしするって言っても簡単じゃないでしょ? バイト、かなりしないとダメなんじゃない?」
「そうかも・・・」
「そしたら、勉強する時間に寝ちゃったりしないのかな?」
「・・・」
「新君の事、待ってる・・・それは、高校卒業までなんて期限つけたつもりないよ?」
「花音・・・それって、僕がこっちに戻ってくるのを何年でも待ってくれるってこと?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「僕が傍に居なくても、他の人に心開かない?」
新君は不安そうな顔をする。
私は昨日貰ったネックレスを首から取り出して、
「約束したでしょ? 私より、新君の気持ちの方が変わらないか不安」
と苦笑した。
「僕は花音が好き。 毎日毎日花音の声を聞かないと寂しいくらい、花音が好きなんだ」
「うん」
「・・・待ってて。 何年経っても花音をお嫁さんにするから」
そう言って私をふわりと抱きしめてくれた新君。
私はただ固まった。
お嫁さん? 話、飛びすぎじゃない?とパニックです。