愛されることを受け入れましょう
あんまりにも心配されるから、ムッとして言い返したらくしゃくしゃと頭を撫でられた。そういうのが子供扱いなんだってば!って顔をもっとムッとさせたら、樹くんが困ったように眉尻を下げた。

「怒るなよ。柚珠奈はそうやって怒ってる顔も可愛いけど、笑った方がもっと可愛いんだからさ。笑って欲しいな」



そうだ。これ、中学生の時からだ。私が樹くんと距離を置き出してから。

それまでは樹くんママが呼ぶみたいに、樹くんにも「柚珠奈ちゃん」って呼ばれてた。
私を可愛いって言ってくれる時だって「今日のリボン似合ってて可愛いね」とか「髪型可愛いね」って褒め方だった。

でも中学生の時から、樹くんは変わってないみたいに変わってたんだ。
さっき気付いた事実を、もう一度頭の中で確かめる。


「柚珠奈」って呼び捨てで呼ぶようになったし、私の髪や洋服を褒めるんじゃなくて、私自身を褒めるようになった。「柚珠奈は可愛いね」って。
それはまるで、私が開けた距離を樹くんが縮めたみたい。

ああ、そっか。だから私と樹くんは疎遠にならなかったんだ。
24歳になる今まで。
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