愛されることを受け入れましょう
そのまま自分も運転席に乗り込んで、発進させる。

無言のままのドライブはイヤな空気だけど、私も話したりしない。ううん、正確に言えば話せない。さっき見た樹くんとキレイな女性のツーショットとか、不機嫌を隠そうともしない樹くんとか、いろんな事が一度に起こったから頭の中がぐちゃぐちゃしてて、何を話せばいいのか分からないのだ。

「着いた、降りて」

結局、二人とも一言も話さないまま到着して。樹くんが助手席のドアを開けてくれるのを見て、ふと言葉が出た。

「なんか、金曜日と同じだね」

あの時も強引に連れてこられた。

「‥‥あの時とは状況がまるで違うだろ」

そう言うとしっかり私の手を握って、足早に歩き出す。

ぐいぐい引っ張られて痛いのに、強く握られた手を見て嬉しくなるなんて、きっと私はおかしい。でも、しっかり繋がれた手だけは昔と同じで、変わらなくて。

ずっと見ていたら泣いちゃいそうだから、そっと下を向いた。




< 125 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop