愛されることを受け入れましょう
樹くんの部屋に入っても手は繋がれたまま、リビングのソファのいつもの位置に座っても解かれなかった。

「で、やっぱり押し切られて結婚するって言っちゃったのか？それで、俺に会いづらくなって、一人で帰ったのか？」

焦ったように問い詰める樹くんの声はイライラしつつもひどく不安げだ。こんな声も初めて聞いたかも。

「え、何言ってるの？」

「だから！理一君に説得されて、押し切られて結婚するって言っちゃったんだろ？こうなるって分かってたから二人で会わせたくなかったんだ。くそっ！やっぱり俺が同席してれば良かった」

「‥‥結婚はしないよ？」

どんどん一人で話を進めて行く樹くんに、遠慮がちに声をかけた瞬間、ピタリと動きが止まった。

「あの、ね、結婚はしない。ちゃんと理一君にも断ってきた」

目を見開いて私を見つめる樹くんに、もう一度はっきり告げる。私が理一君との結婚を受け入れたなんて、いったいどうしてそんな勘違いなんてしたんだろう。

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