愛されることを受け入れましょう
ブチブチと無駄な抵抗を続ける私に、樹くんが悪戯っ子の顔で話しかける。

「そう思うなら柚珠奈がここにに引っ越してきたら?そしたら時間の節約になる」

「無理だよ。こんなセレブなマンション、中小企業のOLの給料で払えるわけないって」

「違うよ。このマンションじゃなくって、この部屋に、さ」

「そ、そんなの!無理にきまってるじゃん。だ、だいたい、樹くんと同居なんてお父さんが許すわけないし。そ、それに、彼氏に悪いもん!」

いきなりすぎる樹くんの提案にわたわたと適当な理由を並べた私は、ふいに鋭くなった樹くんの視線に固まった。

「‥‥‥柚珠奈、彼氏出来たの?」

さっきまでのからかうような楽しげな空気は一気に温度を下げて、いつもよりワントーン低い樹くんの声に凍りつきそうだ。

「違う、よ。この先に出来たらって事。で、でもさ!私、今年24歳になるんだよ?彼氏の一人くらいいたって全然変じゃないっていうか、いないと変っていうか‥‥‥」

「彼氏なんていないと変なわけじゃないし、無理に作るもんじゃないだろ?好きでもないのに付き合う方が変だし、そんな自分の安売り、俺は許さないよ」


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