愛されることを受け入れましょう
しれっと言われて、思わずため息が出た。

どうやら黒くて策士の樹くんはいつも私の前で王子様の皮を被っていたらしい。確かにウソじゃないだろうけど、本質はきっと黒い方だ。

「やっぱり王子様でいて欲しい?」

でも心配げに聞き返す口調は不安げでちょっと可愛いから、肩におでこを乗せたまま、小さく笑ってしまう。

「いいよ、そのままで。王子様の樹くんも好きだけど、策士の樹くんも、私嫌いじゃないみたいだしって‥‥え?」

呟きながら、視界の端に見えたモノが気になって顔を上げた。

そこにあったのはニヤリと笑う樹くんの顔。

「良かった。じゃ、遠慮は要らないかな」

「へ!?え、あ、な、何?」

おどろく私を抱いたまま立ち上がって、樹くんはドアへと進んでいく。

「あ、あの、樹くん?そこって、あの‥‥」

「うん、ベッドルーム。柚珠奈、まだ入った事ないでしょ?」

当たり前だ。さっきまでは幼馴染だったんだもん、流石にベッドルームに入ったりはしてない。
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