愛されることを受け入れましょう
「あらまぁ、柚珠奈は随分メンクイだったのね」

奥様の方は笑って答えてくれたけど、松木氏本人は無言のまま。たまらずに柚珠奈が声をあげた。

「あ、あの、お祖父様。樹くんは‥‥」

「柚珠奈は黙ってなさい!私はそこの彼から話を聞きたいんだ。キレイな顔はしておるが、ニタニタと笑って愛想を振りまいているだけでは、惚れた女は守れないだろうに」

「そうですね。僕も顔で柚珠奈に惚れてもらったとは思っていませんし、愛想で守れるとも考えていません。きちんと納得していただけるだけの自信はあります。まあ、容姿も愛想も悪いより良いに越した事はないと思いますが」

あえてにっこりと笑顔を浮かべて応えると、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべつつも話を聞いてくれた。


幼い頃から俺にとって柚珠奈は特別だった事、好意を自覚してから10年以上側で見守っていた事。その間に誰からも文句を言われないだけの経済力を身につけた事。

話し終わって静かに見つめると、松木氏は「柚珠奈も大変な男に好かれたもんだな」とボソリとこぼした。賛成とまではいかないまでも、反対はせずにいてくれるようだ。
< 157 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop