愛されることを受け入れましょう
「‥‥‥はーい。松木部長、おはようございます」

深々とお辞儀して挨拶しなおしたら、下げた頭にもう一つパコン。

「で、何悩んでんだ?」

会議の資料を配りながら理一君が聞いてくれた。



松木 理一(まつき りいち)、小さい時にりーち君と呼んでいた彼は五つ上の母方の従兄弟。この文具メーカーの親会社の跡取り息子で、今はこの会社で武者修行中。そして、私が職場での出会いを諦めた原因でもある。

過保護な両親は、「ブラック企業に勤めて過労死でもしたら大変だから」と伯父に頼んで、私を縁故入社させた。総合職ならまだしも、一般職の事務員が過労死するほど働く会社ってそんなにある?とは思ったけど、就職活動しなくて良いっていうのは魅力的で、私は親に勧められるまま就職を決めた。

理一君はその時はもう、経理部長で。入社から一年ちょっと、直属の上司として今でも会社での私の面倒をみてくれている。

「どっかに出会いないかなーと思って、さ。職場の出会いは理一君に潰されちゃうし」

「人聞きの悪い事言うな。俺はお前の為を思ってやったんだぞ。あんな男、付き合ったって不幸になるだけだ」
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