愛されることを受け入れましょう
機嫌良く気軽に答える理一君に、聞き覚えのある甘ったるい声が問いかけた。

隣のフロアの総務部の矢口さんだ。理一君を狙ってるって噂はホントらしい。

「何ー?矢口さん、偶然装って松木部長の行きつけの店で待ち伏せするつもりとか?」

理一君に声をかけた男性社員が面白がって言うけど、矢口さんは怯まない。わざわざ理一君の席まで近づいていって、上目遣いでおねだりした。

「だってー。松木部長って部の忘年会とかは参加されるけど、親睦会には全然出ないんですもん。一度部長と飲みに行きたいって思ってる社員、多いんですよー?」

自分じゃなく女子社員でもなく、社員の意見にするとは。頭良いなーって思わず感心する。

「これでもなかなか忙しいからね。親睦会に絶対不参加って決めてる訳じゃないし、予定が合えば参加させてもらうよ」

矢口さんが聞いたのに男性社員に向かって返事をすると、早々に「お先に」と言って理一君はフロアを出て行った。

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