愛されることを受け入れましょう
でも、小学生の身では思うようにいかない。
ママが樹くんちに遊びに行く時は問答無用で私も一緒に連れていかれたし、行けば樹くんと樹くんママが笑顔で迎えてくれる。

樹くんママの作る美味しいオヤツと優しい樹くんはやっぱり私の特別だったけど、これが普通じゃないって事はもう知ってたから。

だから樹くんと会っても、いつもみたいに沢山お話しも遊びもしないようにした。
いっぱい話して、私の顔をいっぱい見てたら、樹くんも私がお姫様じゃないって気付いちゃうかもしれないと思って怖かった。一緒に遊んでたら私がバカだってバレて嫌われちゃうかもしれないことも。

嫌われるくらいなら、大切にされたまま、樹くんのお姫様のまま離れたかったのだ。


そうやって距離を置いて、中学生になった時にはママについて行くのもやめた。部活や友達との約束もあったし、中学生になって更に王子様になった樹くんと会うのも恥ずかしかった。

中学生になっても私はたいした成長もしてなくて、胸だってちっとも大きくならない。なのに樹くんは、今までは私よりちょっぴり高いだけだった身長もぐんっと伸びて見上げるようになったし、声も低くなって大人みたいにカッコよくなった。
樹くんママから「バレンタインに沢山チョコレートもらったのよ」って聞いても納得出来ちゃうくらい。

そんな樹くんに会ったら、どれだけ「好きじゃない」って決めてもまた好きになっちゃいそうで怖かった。
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