桜祭り!【SS集】


――葉月に一通り説明を受けながら桜を楽しんでいると、いつの間にかひと気のないところまで歩いて来ていた。

「ここには桜がないから、人がいないのかな?」

そう思っていたら、ライトアップされていない一本の桜の木があった。満開ではあるものの、小さいので迫力にかける。

「ライトアップされていないから、人がいないんですね」

葉月が少し寂しげに呟く。

「明るければ人が集まる……照明はすごいね」
「はい、いろんな力を持っているんですよ」

夜の静けさの中に、ふたりの笑い声が響いた。風がそっと通り抜け、髪を揺らしていく。妙に、ふたりきりだということを感じた。

「……し、静か、ですね」

緊張しているのか、葉月の口調が少しぎこちなくなる。俺のことを意識してくれているのかと思うと嬉しくてたまらない。

我慢できずに葉月の肩をそっと抱き寄せると、彼女の身体がさらに緊張したのがわかった。

……もっと、俺のことを意識してくれている証。

だけど、葉月には俺といる時間を楽しんでもらいたい。

「葉月なら、この桜の木をどうやってライトアップする?」

照明の話を振ってみると、途端に葉月の身体からフッと力が抜けるのがわかった。

「私なら下からライトを……」

口を開くと、満面の笑みで構想を話してくれる。その饒舌ぶりはいつも通りの葉月だった。

「あ、また話しすぎちゃいましたね……」

しばらくすると、葉月は慌てて口を押えた。

「いや、いいよ。むしろもっと話してもらいたいくらい」
「もっと、って……そんなに甘やかされたら、蒼一さんから離れられなくなりそうです」

葉月が頬を赤らめて可愛いことをいうので、たまらずギュッと抱き締めた。

……悪いけど、離れられなくなるように仕向けているんだ。

もっともっと、キミが俺に夢中になればいい。そのために、これからも愛を込めた策略を張り巡らせよう――。




※「契約彼氏はエリート御曹司!?」のカップル。

*あとがき*
今作も書き下ろしのふたりなので、馴染みのない方も多いかと思いますが…少しでも楽しんでいただけたらと思います。
蒼一は策略を隠すので、蒼一目線のほうがわかりやすいかと思い、今作のみ彼目線にしています。

< 12 / 12 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:7

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
  • 書籍化作品
[原題]お試し愛

総文字数/78,617

恋愛(純愛)123ページ

表紙を見る
クールな社長の耽溺ジェラシー
  • 書籍化作品
[原題]クールな社長とロマンスはじめました!

総文字数/111,596

恋愛(純愛)172ページ

表紙を見る
【ベリーズ男子・全話購入者特典】キミは許婚

総文字数/12,516

恋愛(その他)14ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop