桜祭り!【SS集】
征一郎×詩織 『週末ピクニック』
週末の天気予報は、太陽マークひとつの快晴。とても暖かくなるらしい。
「今週末、お花見に行きませんか?」
お昼休みにひと気のない廊下で、こっそりと会っていたわたし達は、デートの計画を立てていた。
「ああ、俺もちょうど誘おうかと思っていた。……同じことを考えていたんだな」
征一郎さんは少し照れくさそうに、眼鏡を押し上げる。
「わたし、お弁当作っていきますね」
「お弁当……!? ありがとう、すごく楽しみだ」
声を弾ませると、嬉しそうにはにかむ。まるで、プレゼントをもらう前の子どもみたいだ。
これは、頑張って美味しいお弁当を作らないと……!
密かに気合いを入れると、メニューを考えた。
「卵焼きはしょっぱいより甘い派、おにぎりは鮭と梅と……うん、彩りも完璧!」
会社へ行くときより早起きし、お弁当を作り終えたわたしは、ひとりで歓声をあげた。
三段重ねのランチボックスには征一郎さんの大好きなものばかりを詰め込んでいる。
「あっ、そろそろ準備しないと……!」
もちろん、メイクもかかさない。会社では相変わらずほぼスッピンだけど、征一郎さんとデートするときはちゃんとしているので、最近腕が上達した。
髪もゆるくハーフアップにしよう。春色のシャツにジーパン、スニーカー……レジャーシートも忘れない。
「楽しみだなぁ……」
征一郎さんから「美味しい」のひと言がもらえれば、きっと最高のお花見になる。今にもスキップしそうな足取りで家を出た。