声が聞きたくて。
声
私、高宮麻帆は、
幼い頃から〈場面緘黙症〉という障害に
ずっと悩まされていた。
〈場面緘黙症〉は
家庭では普通に話すことができるけど
学校や職場などの特定の場所では話せなくなってしまう、という障害だ。
学校で誰かに話しかけられても
逆にそれをプレッシャーに感じて
心の中では話そうとするのだけれど
うまく話せない――。
けれど、家の中では
元気に話ができて
人見知りと勘違いされることが多い。
私は、その〈場面緘黙症〉という障害に悩まされていた。
『ねえ、高宮さん』
『…………』
声をかけられても
緊張してうまく返事ができなくて。
そのせいでクラスに馴染めなくて。
そんな自分が嫌になっていた。