僕だけの素顔
「……何で?」
「何でって……やっぱ変かな?」
「いや、変っつーか……何つーか……」
言葉を濁(にご)す俺に、彼女は頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
コイツ……無自覚もいいとこだ。
彼女がメガネを外すのは──非常にマズい。
何がマズいかと言うと、
「……あ。汚れてる」
さりげなくメガネをスッと外して、拭き出した。
その素顔……マジでヤバすぎ。
そう。メガネ女子にありがちな──
『メガネ外すと、実は美少女』
彼女は、まさにそれ。学校一と言っても過言じゃない。
コンタクトになんてした日にはもう、余計な野郎どもが寄ってくること間違いなし。
だから俺は、
「お前は……メガネの方が、絶対いいと思う。
俺だって、メガネかけてるお前が好きだし」
さりげなく断固阻止。
「そっか……へへっ。なら、メガネのままでもいいかな?」
小さく照れ笑いをしながら、拭き終わったメガネをかけた。
ホッ……良かった。
言っておくけど、今の『メガネかけてるお前が好きだし』は、断固阻止するためのウソとかじゃなく、俺の本心だから。
メガネも彼女の一部。それも引っくるめて可愛いと思ってるし、好きだと思ってる。