奏でるものは~第2部~
10月に入り、息つく暇もなく、舞踊の大会本番の日を迎えた。
荷物は事前に届けたので、朝から祖母と車で向かう。
あちこち挨拶に回った後、白塗りをしてもらい、着付けと、鬘も被せてもらう。
完全に別人になった私。
音楽が始まり、舞台で踊ると集中する。
途中の早着替えも難なくこなしてもらい、裏方さんとの引き抜きも成功する。傘や扇子で踊り、長い舞が終わった。
たくさんの拍手がありがたい。
次の演目が始まり、楽屋に戻った。
ふぅ、と息を吐く。
「着替えは待ってね、写真を撮りたいから」
私の小道具を持ってきてもらい、裏方さんや、着付け師、顔師、髪結い、祖母と両親、兄も来て、記念写真として、たくさん写真を撮った。
「ありがとうございました」
一人ではできない。
舞台にあがる私は、私がやりたいがために、たくさんの人に支えられていた。
他の出演者とも写真をとり、華やかな写真がスマホに入る。
家族だけで、ホール入り口の看板でも撮った。
衣装のまま外に出るのは躊躇ったが滅多にないので、写真におさめた。
「花魁みたいね」
「え~?あんな下駄ははかないし、色気もないわ」
「それもそうね」
母が着たらそうなるんだろうな、と思ったが、黙ってた。
私には色気はない。
小袖の和服に着替えて、片付けも手伝う。
演目の発表も無事に続いているようで、夕方には表彰式も終わり、それぞれ帰り支度をしていた。