眠れぬ王子の恋する場所
買ってきたものは、ドリンクタイプの風邪薬と冷却シート、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、それと栄養補助食品のゼリー。
それらが入っているビニール袋をソファに置いてから、冷却シートの箱を開ける。
「風邪薬もまだですよね? これ、飲んでください」
茶色い瓶を渡すと、久遠さんはそれをじっと見たあと、受け取る。
ペキッと金属のフタを開けた音がして、ホッとしながら冷却シートを箱から取り出した。
錠剤がダメだって話だったから、もしかしたら未だに薬全般がダメかもしれないと思ったけど、よかった。
風邪薬を飲んだ久遠さんが「すげーマズイ」と文句を言うから、ペットボトルに入ったミネラルウォーターを渡す。
ゴクゴクと飲んでいるところを見ると、喉が渇いていたのかもしれない。
熱が高いなら水分補給は小まめにしないと脱水症状になってしまう可能性だってあるのに……本当に自分の身体をいたわれない人だな……と思うと呆れてしまう。
「ちょっと、前髪上げててください」
冷却シートを両手で持ちながら言うと、久遠さんは素直に片手で前髪を上げる。
言われるままの様子に少しおかしくなりながらもシートを貼ると、久遠さんはぐったりした感じでソファの肘置きに寄りかかった。
「久遠さん。ここだと余計に熱上がっちゃいますから、ちゃんとベッドで寝て下さい。
ちゃんと温かくしておかないとひどくなって病院行かなくちゃになりますよ。そしたらきっと薬は錠剤で出てきますし、嫌でしょ?」
久遠さんの肩をゆすりながら声をかける。
空調が効いているから、私的にはちょうどいい温度だけど、熱のある久遠さんにとっては寒いかもしれない。