眠れぬ王子の恋する場所
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「……琴。真琴」
まるで、発音を確認するように呼ばれ、ふふっと笑みがこぼれる。
なんでそんなに大事そうに呼ぶんだろうと、夢うつつに思いながらもそっと目を開け……そして、見慣れない光景に驚き顔を起こす。
ここ、どこだっけ……。
そう、一瞬考えてから、久遠さんの部屋を訪ねていたことを思いだしハッとしていると「さっきから電話がずっと鳴ってる。三ノ宮じゃねーの」と声をかけられる。
見れば、すっかり暗くなった部屋のベッドの上で、久遠さんが上半身を起こしていた。
「あ……すみません。すっかり寝ちゃって……」
「もし、なにか入ってきてたらふたりしてやられてたな。番犬の方が役に立つ」
「そもそもあんな数の鍵を破って入ってくる人なんていませんし」と、バツの悪さに口を尖らせてから、久遠さんをじっと見た。
「体調、どうですか? 少しは眠れました?」
久遠さんは私を横目で見てから目を伏せる。
「おまえの電話が鳴るまでは寝てた。熱は下がりきってない気がするけど、体感的には朝よりはいい」
「そうですか……よかった。でも、一応、熱計ってくださいね。今、体温計持ってきますから」
安心して立ち上がり寝室を出る。
でも、私を追うようにギシリと音を立てたベッドに立ち止まると、久遠さんも寝室から出てきたところだった。
「久遠さん、まだ寝てたほうが……」
「俺も一度起きる。喉乾いたし、腹も減った」
「食欲出てきたんですね。よかった……。あ、でも食べるものないし、私なにか買ってきましょうか」
お腹が空いたって言うのにゼリーじゃ物足りないだろうし、コンビニでおにぎりだとか買ってきたほうがいいかもしれない。
……でも、久遠さんってコンビニのものとか食べるのかな、と疑問を抱いていたとき、「いや、デリバリーでも頼むから」と返される。