眠れぬ王子の恋する場所
「……まぁ、いいか」
ごちゃごちゃ考えるのも面倒になってしまい、そう片付ける。
それから、帰るタイミングをひとつ逃しちゃったなぁ……と思いながらソファに腰掛けた。
皮のソファから、一面に広がる黒い棚を眺める。
たくさん並ぶ本のなかには、デザイン関係のものも多く、久遠さんが提供しているっていうレストランの天井を思い出す。
他にも、世界の風景の写真集なんかもあるから、自然でも人工でも綺麗なものが好きなのかもしれないなぁ……と眺めて、一番下の棚で視線が止まった。
そこ並んでいるたくさんのパズルの箱に、久遠さんの心の闇みたいなものを思い出す。
眠れない時間にパズルをすることが、久遠さんの精神安定剤となっているのかもしれない。
何十箱ってあるパズルの箱の量が、久遠さんの苦しみに比例しているように感じ、じわりじわりと痛みが奥まで浸食していく。
きっと、ここにあるだけじゃない。もっとたくさんの箱があるはずだ。
それでも、久遠さんはひとりで耐えてきたのか……。