眠れぬ王子の恋する場所
「え……いや、知らないけど……それって、泥棒に入られたってこと? 真琴は鉢合わせたりしていないんだよね?」
心から心配そうに言うこの態度が、本心からであればいい。
今さらだと思いながらも、そう願いうなづいた。
確信が近づいてくるのと同時に目を逸らしたくなったけれど……必死の思いで隆一を見上げた。
「私は犯人を見てない。ただ……一応、隆一に確認だけしておきたかっただけ。知らないんだよね?」
確認するように聞いた私に、隆一がうなづく。
「いや、俺は知らな――」
「なら、よかった。これで、心置きなく警察に被害届が出せる」
にこりと笑顔を作って見上げると、隆一の顔がわずかに強張った気がしたけど、気付かない振りをした。
なにかを感じ取った心臓が、ドッドと不穏な音を立てていた。
「警察に相談したら、合鍵を持っていて親しい人の可能性が高いって言われたの。隆一のはずないって思ったけど、魔が差したとか何かの間違いってこともあるかもしれないから、一応確認しておきたくて。
……話はそれだけ。ごめんね、突然」
隆一の顔色がじょじょに悪くなっていくのが見て取れた。
「じゃあね」と背中を向けると、すぐに「待って」と腕を掴まれ……ゆっくりと振り返ると、さっきまでの穏やかな仮面を脱いだ隆一がいて、ああ……と思う。
違えばいいと思ってた。
私の勘違いであって、泥棒は他にいたならいいって……。
私の悪い噂を立てたのにもきちんとした理由があって、付き合っていた期間は本当に私を想ってくれてたんだって……そう思いたかったのに。
眉を寄せ、情けないほどに表情を崩した隆一が「真琴、ごめん、俺……」と謝罪する。
私の腕をギュッと掴んだまま弁解の言葉を並べる隆一を、気持ちを遠くにしながら聞いていた。