眠れぬ王子の恋する場所


「久遠財閥の持つホテルって予約以外受け付けない高級ホテルばっかなのに。やっぱり御曹司ってなると色々話が通るんだね。
そういう、特別な客が飛び込みで泊まれるように何部屋か常にキープしてるのかな」

「……そうかもしれないですね」

あまり推理されると、嘘がバレそうでハラハラしてしまう。

そのうちに、手元のタブレットで色々調べられてしまいそうで、どうしようかと考えていたとき、社長が「まぁ、そうだよな。ホテルだよなぁ」と陽気な声で話し出す。

「いや、久遠がやたらと佐和のこと気に入ってるから、もしかしてとは思ったんだけど。さすがに自宅に住まわせるなんてことはしないよな。
久遠には他人と同居なんてレベルが高すぎだし」

明るく笑う社長に、その通りなだけに、はは……と乾いた笑みがこぼれる。

でも、社長の言う通りだ。
久遠さんにとっては他人との同居なんて、ありえないことだと思ってたんだけど……。

ただの気まぐれだろうか……と考え、そういえばと思い出して、社長に視線を移した。

「社長、ところで久遠さんってどうして自宅に戻ったんですか?」

最初は、風邪を引いたってことだったし、静養のためかとも思った。

錠剤に抵抗があるって話だったから、久遠さんが飲める粉薬とかが自宅に置いてあるからなのかなって。

でも、久遠さんの様子を見る限り、そういうわけでもなさそうだった。
看病に行く前にもし薬を飲んでいたら、私が持って行ったドリンク剤を飲まないだろうし。

だとしたら、自宅に戻った理由はなんだろう。

不思議に思っていると、社長も「俺も珍しいとは思ってたんだよなぁ」と首を傾げた。



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