眠れぬ王子の恋する場所
「無理ないよ。誰だって一度怪我したら怖いし、治るには時間がかかるから。それでも、また同じこと繰り返すんだから、人間って逞しいよね。すごいタフだよなぁっていつも思う」
「なんか、客観的に言ってますけど、吉井さんも人間ですからね」
「こういう、俺みたいなのと、燃料は一体なんなんだよって疑いたくなるくらいの熱血教師タイプを〝人間〟ってひと括りにしちゃうんだからすごいよね」
そこまで言った吉井さんは、退屈そうにあくびをしたあとで、私を見る。
「それより、俺眠くなってきちゃったんだけど、披露宴で寝る新郎友人って自然だと思う?」
真面目な顔で聞かれ……眉を潜めて首を振った。
「不自然です」
「えー……」
「ごねてもダメです。ほら、もうみんな席に戻ってきますから、ちゃんとしてください」
あきらかにグダッとして背もたれに寄り掛かっているから注意すると、吉井さんは座り直しながらため息を落とす。
「……っていうか、長くない? 二時間も披露するとかどういうつもりだろう。そんな長時間披露し続けてこっちが喜ぶとでも思ってんのかな。だいたい、お色直し二回ってありえないでしょ。白ドレスにカラードレスに和装まで披露してくるとかナルシストすぎない?」
とぶつぶつ文句を言う吉井さんに、相変わらずだなと笑みをこぼした。