眠れぬ王子の恋する場所


「一緒にいて苦痛とまでは思わないけど……それ、何時間の話? 授業とか仕事じゃなくてプライベートで会うんだったら二時間までが限界。
佐和さん、ピザあと何切れいける? 俺もう腹九分超えたんだけど」

「あとひと切れが限界です。っていうか、半分は食べてくださいよ。
プライベートで二時間……え、短すぎません? それって友達だけじゃなくて恋人でも?」

八つにカットされていたピザの残りは四切れ。

私は三切れ食べたから、吉井さんはまだ一切れしか食べていないことになる。
それで腹九分って言う吉井さんの食の細さが心配になりながら、ピザに手を伸ばす。

これで一応の私のノルマは達成だ。

「恋人でも無理。前、一回付き合ったとき、部屋に遊びにきた彼女が全然帰ってくれなくて、そのうちに〝泊まりたい〟とか言い出したから、土下座して帰って下さいって頼んだくらい無理。
社長は平気なんですか? 女とずっと一緒とか」

ひとりで一枚のピザを平らげた社長は、食後の煙草を吸いながら「あー、俺も無理だなぁ」と苦笑いを浮かべる。

「友達とか同僚ならどれだけいても気になんねーけど、彼女ってなるとなぁ。一泊くらいならいいけど、何日もってなるとキツい。
気遣わなくていいとか言う女もいるけど、そうじゃねーんだよなぁ。一緒にいる空気がもうダメっつーか。空気の共用がきつい」

「あー、すごいわかる。そう。もういられるだけでダメな感じ。俺に気を遣ってくれるならひとりにして欲しいって思う」
「それなぁ。でも、俺も〝なんでも頼んでいいよ〟とか言うから、じゃあ二時間ひとりで出かけてこいって言ったらケンカになったことあるから、言わない方がいいぞ。面倒くせー女はそういうこと言うとキレるから」

「……〝面倒くせー女〟じゃなくても、大半の女性が怒るんじゃないですかね」



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