眠れぬ王子の恋する場所


なんとなくではあるけれど、初めて会ったときよりも顔色はよくなった気もするし、隈も多少薄くなった気がする。

でも、相変わらず覇気はないなぁと思いながら眺めてから、さっきまで久遠さんが座っていたデスクに視線を移す。

久遠さんは今日、どうやら仕事をしていたようで、私がきたときにはパソコンに向かっていた。

きちんと仕事をしている姿に驚いた私を、久遠さんは「おまえ、どんだけ失礼なんだよ」と睨んだけど……言われてみて、たしかに……と思った。

病人の看病してると無意識に思っていたのか、仕事なんかして大丈夫かな……?と瞬間的に心配してしまったけれど、久遠さんは別に病人じゃない。

……まぁ、病院に通えばそれなりの病名がつきそうではあるけれど。

「久遠さんは、こうして私を呼びますけど、一緒にいて息苦しくなったりしませんか?」
「なに、急に」

片手を後ろにつき、片手ではカップを口に運ぶ久遠さんに、社長や吉井さんのことを説明する。

「この間、プライベートで異性と一緒にいるのは二時間くらいが最適だって話になって。
私はそうは思わないんですけど、男性ふたりの意見がそれで一致していたので、久遠さんもそうっぽいなーと思いまして」

久遠さんの周りは、相変わらずクッションが筋斗雲状態だけど、私のお尻の下にも、クッションが敷かれている。

ここに来るようになって二日が経ったとき、久遠さんが「使え」と差し出してきてくれたから、それからというもの、このクッションは私専用になっている。

片手を身体の後ろの床についた体勢の久遠さんは、表情を変えずに言う。


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