眠れぬ王子の恋する場所
朝、出勤し、既にきていた社長に挨拶して、椅子に座ったところで違和感を感じて背中を振り返った。
背もたれにつくと背骨のあたりが痛い。
そこまで気にするほどでもないけれど、でもたしかに痛む……と考え、思い当った原因に顔を覆いたくなった。
たぶん、昨日、久遠さんの部屋で起こったことが原因だ。
あのまま床でしたから……それで。
久遠さんは私を慰めるつもりだったのか、初めてのときよりも優しくて強引な部分はなかったけど……でも、床に転がったまま揺すぶられたらどんなに優しくされたところで背中だって痛くなる。
そう考えて……今度こそ、両手で顔を覆った。
一回目はまだいい。
久遠さんが仕掛けてきたことだし、私は応えただけだって言い訳もできる。
でも、昨日のはダメだ。
合意の上での行為に、過失の割合をあてるのはおかしいけれど……昨日のは割合的に私が悪かったから。
一度ならまだしも二度って……!と頭を抱えていたとき、社長が「おまえ、大丈夫か」と声をかけてくる。
顔を上げると、不思議そうに片眉を上げた社長が私を見ていた。
「……なにも問題ありません」
「出勤してくるなり顔覆ったり頭抱えたり……昨日、久遠となんかあったか?」
「な、なにかって……?」