眠れぬ王子の恋する場所


「でも、社長も久遠さんに会ってるんですね」

最近、私が毎日のように様子を見に行ってその報告をしているから、それで済ませてるのかなと思ってたのに。

しっかり自分も時間作って様子を見にいっていたのかと、そこに、社長の顔には似合わない〝友情〟を感じ、笑みがこぼれそうになる。

「まぁ、たまには直接顔見ないとな。でも、前会ったときよりも明るい顔してたから安心した」
「……明るい顔?」

とてもじゃないけれど、ここ二週間の久遠さんの顔を思い出してみてもそんな風には思えず苦笑いを浮かべると、社長が笑う。

「あいつは表情が乏しいからなー。でも、中学から一緒の俺が言うんだから間違いない。今のあいつは、だいぶ気が楽になってる」

そう言った社長が、水を飲んでから続ける。

「少し前までは、久遠はひとりが好きなんだと思ってたんだ。話しかけてもあんま嬉しそうな反応しないし。でも、ここ数年でそうじゃねーかもって気付いた。
人と接することで楽になる部分はたしかにあるし、あいつにはそういう時間が足りなかったのかもって」

たしかに久遠さんに話しかけても、あまり好感触な反応は返ってこない。
むしろ、うっとうしがってるのかな……っていうくらい、反応が悪い。

でも……こうして毎日のように呼びつけているところをみると、人間が嫌いだとかひとりが好きだとか、そういうわけでもないのかもしれない。

「でも久遠は気難しいからな。自分から近づいていくタイプでもないし、それに、誰でもいいってわけでもねーし。どうにかなんねーかなって考えてたんだけど」

視線をこちらに向けた社長が、にっと口の端を上げ「あの時、おまえを向かわせてみてよかった」と言う。



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