眠れぬ王子の恋する場所
まぁ……でも、寝てれば治るだろう。
今日一日、薬を飲んで寝て、まだ下がらなかったら明日は病院だなぁ……と考え、目を閉じる。
カーテンを引いていても入り込んでくる外の光が、瞼の裏を明るくする。
平日の十時なんていつも部屋にはいないから、不思議な気分だった。
遠くを走る電車の音を聞きながらうとうとしていると、今度は車の音が聞こえてくる。
ベッドに横になっていると、このまま溶けて沈んでいくんじゃないかってほどに身体が熱くダルかった。
だんだんと眠りに落ちていくなか、喧噪を遠くに聞いていると、ピンポーン、とインターホンがなり、ハッとする。
「……まぁ、いいか」
こんな時間にうちを訪ねてくる人なんて、まず勧誘やそこらだろう。
そう判断し、無視しようとしたところに、二度目のインターホンが鳴る。
それでも、ダルい身体を起こす気にはなれずに放っておくと、インターホンは三度、四度と鳴り……その異常さに、さすがに放置するわけにもいかず、身体を起こしのろのろと玄関に近づいた。
いつもの倍以上に感じる重力に耐えながらもドア前まで行き、覗き穴から外を確認して……言葉を失った。
……いやいや、まさか。
熱のせいで幻覚でも見てるんだろう。……でも、なんで会いたいとも思っていない久遠さんが幻覚にまでなって現れるんだろう。
そんな風に、ろくに動かない頭で考えていると、今度はインターホンが連打され始めたから、仕方なく鍵を開ける。
すると、向こう側からドアが開けられ……覗き穴から確認したとおり、久遠さんが姿を現した。
「……寝てたのか?」
私がパジャマ姿だったからか、わずかにバツが悪そうに言う久遠さんに「まぁ。熱があるので」と返す。