眠れぬ王子の恋する場所


未だ床に胡坐をかいたままでいるから聞くと「今日は休みにした」と返事をされる。

久遠さんの仕事はよくわからないけど、見ている限りだとあまり土日とか関係なくパソコンや書類と向き合っているっぽい。

いつだったか、手元をチラッと見たときにはハウスメーカー部門で取引があった顧客からのヒアリング情報、みたいな内容に目を通していて、その内容の細かさにびっくりした覚えがある。

社長に聞いた話だと、久遠財閥は、ハウスメーカーやら医療機器関係やら、金融関係といろんな分野に手を広げているから、久遠さんはそういった事業を管理したり、上がってきた報告書に目を通したりしているらしい。

とにかく確認するものが多いから、社長は『俺だったら三日で嫌気が差す』と苦笑いを浮かべていた。

そういった書類相手だから、休みはとれるときにとるんだろうけど……。
久遠さんに帰ってほしいのに、仕事以外の理由が思いつかなくて、休みと言われ落胆してしまう。

なんで自分の部屋なのに私が気を遣わなくちゃならないの……と思いながら、布団をかけ直した。

久遠さんは動く気配を見せない。

「ここにいるならいてもいいですけど……沈黙は気まずいので、なにか歌うなり話すなりしてくれませんか。静かだと落ち着かないです」

ホテルの部屋みたいに、久遠さんがパズルなり仕事なりしていてくれれば、静かでもなにも思わないけれど、暇そうに黙られていたんじゃ落ち着かない。

そう説明すると、久遠さんは難しい顔をした。


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