エリート御曹司が過保護すぎるんです。
【2】託された鍵
「下の駐輪場に停めてあったオレンジの自転車、もしかして和宮さんの?」
昼休みの終了間際のことだった。
席に戻るとマーケティング部の千坂《ちさか》主任が事務の席にやってきて、私にそんなことを尋ねた。
地下鉄の駅からすぐの場所にあるこのビルでは、自転車通勤をしている人間はごく一部だ。
駐輪場に停めてある自転車の数はそれほど多くはなく、オレンジというのは、たしか一台しかなかったはずだ。
「はい。たぶん私のです」
すると主任は困ったように頬を掻いた。
「いまさ、ビルの管理事務所から連絡が来たんだけど、大変なことになってるみたいだよ」
「大変なこと……ですか?」
千坂主任の話によると、たったいま駐輪場で事故があったらしい。
運送会社のトラックが、誤って突っ込んでしまったというのだ。
慌ててオフィスを飛び出す。
エントランスを出て裏にまわると、駐輪場では、ビルの警備員やトラックの運転手、そして数人の社員が集まっていた。
「ああ……」
それ以上の言葉が出ない。
『大破』という言葉がぴったりの惨状だ。
駐輪場の柱が「く」の字に折れ曲がっていて、トタンの屋根が半分落ちかけている。
裏口付近にバックで停車しようとしたトラックが、目測を誤ってそのまま駐輪場に突っ込んだらしい。
横長の駐輪場の半分が、見事に破壊されていた。
昼休みの終了間際のことだった。
席に戻るとマーケティング部の千坂《ちさか》主任が事務の席にやってきて、私にそんなことを尋ねた。
地下鉄の駅からすぐの場所にあるこのビルでは、自転車通勤をしている人間はごく一部だ。
駐輪場に停めてある自転車の数はそれほど多くはなく、オレンジというのは、たしか一台しかなかったはずだ。
「はい。たぶん私のです」
すると主任は困ったように頬を掻いた。
「いまさ、ビルの管理事務所から連絡が来たんだけど、大変なことになってるみたいだよ」
「大変なこと……ですか?」
千坂主任の話によると、たったいま駐輪場で事故があったらしい。
運送会社のトラックが、誤って突っ込んでしまったというのだ。
慌ててオフィスを飛び出す。
エントランスを出て裏にまわると、駐輪場では、ビルの警備員やトラックの運転手、そして数人の社員が集まっていた。
「ああ……」
それ以上の言葉が出ない。
『大破』という言葉がぴったりの惨状だ。
駐輪場の柱が「く」の字に折れ曲がっていて、トタンの屋根が半分落ちかけている。
裏口付近にバックで停車しようとしたトラックが、目測を誤ってそのまま駐輪場に突っ込んだらしい。
横長の駐輪場の半分が、見事に破壊されていた。