エリート御曹司が過保護すぎるんです。
「大丈夫?」

 うつむいた私を見て心配になったのか、少しかがんで、彼が耳もとでささやいた。

 ふわっと香る、オーデコロン。
 一気に心拍数が上がった。

 窓に映った二階堂さんに向かって、慌ててコクコク頷く。
 すると、彼はニコッと笑い、私の頭の上に顎を乗せた。

(どういうシチュエーションなの、これ!)
 
 二階堂さんって、こんなことしちゃうキャラだった!?

 自転車置き場でのことといい、今日は彼の意外な一面をたくさん見ることができた日だった。
 けれど、最後の最後でとどめを刺された気分だ。


「ごめんね。うしろからかなり押されていて」

 頭の上から、甘い声が降ってくる。
 どうやら彼のうしろもかなり混雑しているらしく、私とのあいだにわずかな空間を作るのが精一杯のようだ。

「ぐしゃぐしゃの頭でよかったら、いくらでも使ってください!」
「ほんとうに和宮さんはおもしろいですね。じゃ、お言葉に甘えて」

 二階堂さんが私を抱きすくめるように密着してきた。
 そして私の頭の上にふたたび顎を乗せた。

 彼の息づかいがすぐ真上で聞こえる。

 私の心臓は、いまにも破裂しそうなほどバクバクと鳴っていた。
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