エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 それから、こんなこともあった。

 朝、いつものように早めに出勤した私は、オフィスの窓を開け、観葉植物に水やりをした。
 そして自分のデスクに戻り、事務作業を始めた。

「おはようございます」

 少しすると、爽やかな笑顔を振りまきながら、いつものように二階堂さんがオフィスに入ってきた。

「おはようございます」

 私も、なるべく平常心を装って挨拶を返す。
 すると、二階堂さんが事務デスクの傍らにブリーフケースを置き、おもむろに私の左手を握った。

 いきなりの出来事に、何が起きたのかわからずパニックになる。

「和宮さんの爪ってきれいですよね。ネイルアートっていうんですか?」

 私の爪には、ピンク色のネイルアートが施されていた。
 昨日の帰り、同僚の須田青羽に誘われ、会社の近くにあるネイルサロンに寄ったのだ。

「女の子らしくていいですね。デザインが、和宮さんにぴったりです」

 彼はにこにこしながら両手で私の手を握り、興味深げに爪を眺めている。
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