エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 ピンクのグラデーションに白い小花のモチーフのついたデザインで、正直あまり凝ったものではない。

 恥ずかしくなって手をひっこめようとしたが、二階堂さんはネイルアートがめずらしいのか、なかなか手を離してくれない。

 すぐ目のまえに見える、日に焼けた顔。前髪がさらりと揺れて、いつものオーデコロンの香りがふわりと漂う。

「あ、あの、二階堂さ……」
「はい?」
「て、手を……」

 ドギマギしながら彼の揺れる前髪を眺めていたら、突然誰かがオフィスに飛び込んできた。

 膝上丈のタイトスカートからすらりと伸びた脚。
 少し日に焼けた、卵型の小顔。

 長身で細身の女性は、艶やかなストレートのロングヘアを揺らしながら一直線に事務デスクに向かってくる。
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